ゴー宣DOJO

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笹幸恵
2016.2.13 08:28

ゲスな気分を洗浄する

私の好きなミュージカルの一つに

「愛と青春の宝塚」があります。

戦前戦中の宝塚を描いた作品です。

 

戦前の華やかな宝塚の舞台。

タカラジェンヌたちは夢を語り、

厳しいレッスンに励み、トップスターに憧れました。

しかし戦争が激しくなると、公演は中止、

彼女たちは各地へ慰問に行くようになります。

華やかな衣装もステージもないところへ、

ろうそく一つ持って唱歌を歌うのです。

 

満洲へ慰問に行ったエピソードは、

印象深いシーンの一つ。

難病で余命いくばくもないタカラジェンヌの一人は、

最後まで舞台に立ちたいと願って満洲に来ました。

そこに、明日出撃するという部隊の兵士がいました。

彼は夜、一人で空を見上げて泣いていました。

眠れなかったタカラジェンヌは、彼の隣に座り、

わざと明るく振る舞う彼を抱きしめ、キスをするのです。

 

翌日、それがバレてしまった彼女は

「ハレンチだ!」と指導教官に叱られてしまいます。

けれど彼女は自分の死を宣告して、キッとして言うのです。

「私と兵隊さんは、若くして死を身近に感じてしまった者として、

慰め合いたかっただけなんです!」

 

前線に出た男と女、明日をも知れぬ命、

互いのぬくもりを感じ合うのは、せめてもの慰めであり、

生きる喜び、生きる実感でさえあるのかもしれない。

 

慰安婦とは少し違うかもしれないけど、

戦時中、こんなふうに互いに手を取り合う兵士と慰安婦も

きっといたことだろう。

そこには、もしかしたら男女をも超越した何かが

あったかもしれない。

 

切なくて悲しい。

けれど美しい。

 

イクメン不倫“元”議員の会見で

こっちまでゲスな気分になってしまった私は、

「愛と青春の宝塚」を観て心を洗浄いたしました。

これで清らかに明日の道場を迎えられそうです。

笹幸恵

昭和49年、神奈川県生まれ。ジャーナリスト。大妻女子大学短期大学部卒業後、出版社の編集記者を経て、平成13年にフリーとなる。国内外の戦争遺跡巡りや、戦場となった地への慰霊巡拝などを続け、大東亜戦争をテーマにした記事や書籍を発表。現在は、戦友会である「全国ソロモン会」常任理事を務める。戦争経験者の講演会を中心とする近現代史研究会(PandA会)主宰。大妻女子大学非常勤講師。國學院大學大学院文学研究科博士前期課程修了(歴史学修士)。著書に『女ひとり玉砕の島を行く』(文藝春秋)、『「白紙召集」で散る-軍属たちのガダルカナル戦記』(新潮社)、『「日本男児」という生き方』(草思社)、『沖縄戦 二十四歳の大隊長』(学研パブリッシング)など。

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